【コラム】ダイヤモンドダストと二酸化炭素の昇華について

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今回のコラムのテーマは、「ダイヤモンドダスト」です。

みなさんはダイヤモンドダストと聞いて、何を思い浮かべますか?管理人の場合、ポケモンのレッドと戦うときにたまになる天候、というイメージが強いです。このゲーム内でもかなりのレアイベントらしい(自分は実機で見たことない)ですが、現実のダイヤモンドダストも、雪国に住んでない限りはほとんど縁がない現象でしょう。自分も写真でしか見たことがありませんが、きらきらしていてとてもきれいですよね。この現象はなぜ発生するのでしょうか。

ダイヤモンドダストに必須の現象「昇華」とは?

物質の状態変化は意外と複雑です。小学生のとき、「あらゆる物質は、温度によって固体・液体・気体の3つの形をとる。」と習いませんでしたか?実はこれは間違いです。正確には、温度だけでなく、周りの気圧も物質の状態変化に影響します。そして、気圧が小さいほど、低い温度で融解したり、沸騰したりします。高山でお湯を沸騰させたらぬるかった、という経験をされた方もいるのではないでしょうか。

これに加えて、周りの圧力が十分に低い環境で物質を熱すると、物質が固体から液体を経由せずに気体に変化することがあります。この現象を、昇華と呼びます。逆に、気体から直接固体に変化することも同じく昇華と呼びます。

昇華する物質で一番有名なのが、二酸化炭素です。これの固体はよく「ドライアイス」と呼ばれて、よくアイスクリームなどの保冷剤として使われます。ドライアイスは常温で放置しても、固体から気体へ昇華するため、周りがびしょぬれになることはありません。

三重点とは

もう少し昇華について理解を深めましょう。物質の状態は温度と周りの圧力によることは先述しましたが、実はこれらを見やすくグラフにしたものがあります。下の図のように、横軸に温度、縦軸に圧力を考えます。

図のように、固体・液体・気体の部分が集まっているところを三重点といいます。(ちなみに、液体と気体の間の線の途切れている点は臨界点といいますが、今回は関係ないのでパス。ただかなり面白い性質を持っているので、気が向いた時に記事にします)

例えば、二酸化炭素の三重点は、大気圧である1000hPaより高い位置にあるため、気体と液体が直接変化します。もし液体の二酸化炭素が欲しかったら、ドライアイスに圧力をかけて、周りの圧力を三重点より高くしなければなりません。

 

ダイヤモンドダストのでき方

ダイヤモンドダストは、空気中の水蒸気が-15℃以下という環境で急激に冷やされて、固体になることを言います。水の三重点は、温度が0.0098℃、圧力が0.006atmと言われています(海抜0mの大気圧が1atm)。つまり、水蒸気が直接氷になるには、周りの圧力が0.006atm未満でなければいけません。もちろんそんな場所は地上に存在しないでしょう。ただ、それでは水蒸気の昇華は地上では起きないことになってしまいます。

もし水蒸気が急激に冷やされたらどうでしょうか。水蒸気はまず液体になろうとしますが、その前に水蒸気の温度が0℃を下回ったら?周りからは水蒸気は直接氷に変化したようにみえるはずです。この方法で昇華したものが、ダイヤモンドダストなのです。

「急激に冷やされると、結晶はあまり成長しなくて小さくなる」ことは、火山岩や結晶成長の勉強をしたことがある人は聞いたことがあると思います。ダイヤモンドダストも同じで、一つ一つの氷は0.1mm以下と、とても小さくなっています。

まとめ

・二酸化炭素は地上の環境でも昇華を起こす。

・水蒸気は通常地上では昇華を起こさないが、急激に冷やされることで、昇華可能になる

 

以上です。一生に一度でもいいから、写真などではなく実際にダイヤモンドダストを観察したいです。

 

参考文献

・新井重男(1990)『天気の事典』,三省堂.

・光田寧(1988)『気象のはなし』,技報堂出版.

・D.W.Rogers(2013)『コンサイス 物理化学』,中村和郎訳,東京化学同人.

・山内淳(2017)『新・物質科学ライブラリ=3 基礎 物理化学II[新訂版] -物質のエネルギー論-』,サイエンス社.

・NHK(n.d.)「ダイヤモンドダスト | クリップ | NHK for School」,(http://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005402768_00000),最終アクセス日2017/11/16.

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