超伝導とは―なぜ超伝導体は磁石で浮くのか

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[mathjax]

理科の教科書やテレビなどで、超伝導体が磁石の上で浮いている様子を見たことがある人は多いだろう。だが、なぜ浮くことができるのかまで知っている人はそこまで多くないと思われる。

この記事では、なぜ超伝導体が磁石の上に安定して浮くことができるのかを考える。



超伝導状態とは

超伝導状態とは、電気抵抗が0になっている状態のことである。ちなみに、超伝導状態でない状態のことを常伝導という。

通常超伝導状態は、約40K(-233℃)未満のようなごく低温でのみ観測される。物質が超伝導状態をとるとらないの境界の温度のことを転移温度とよび、\(T_C\)で表される。この\(T_C\)は超伝導物質ごとに異なる。また、比較的高い温度で超伝導となれるものは高温超伝導と呼ばれるが、それらの大多数の転移温度は-200℃から-100℃の範囲にとどまる。2018年現在で最も高い\(T_C\)を持つ超伝導物質でも203K(-70℃)であり、常温には程遠い(ちなみにその物質は高圧力中の硫化水素\(H_2S\)である)。

超伝導の反磁性

超伝導状態の物体に磁石を近づけると、その物体は磁石から遠ざかろうとする。液体窒素中の高温超伝導体に磁石を近づける実験を見た人も少なくないだろう。

これは、超伝導が反磁性をもつことを表している。

ただし、超伝導が反磁性をもつというだけでは、超伝導体が磁石の上に安定して浮き続けられる理由は説明できない。事実、磁石の上に別の磁石を浮かせるのも簡単にはできない。磁石から出る磁場で超伝導物質を固定できればいいのだが…

マイスナー効果

物体が超伝導になっているとき、磁場はその物質中に侵入できなくなる。この現象のことをマイスナー効果という。

では、超伝導状態の物質に強い外部磁場を印加して、むりやり磁場を侵入させようとするとどうなるだろうか。

外部磁場が一定の値を超えると、超伝導が破壊されてしまう。超伝導を維持できる最大の外部磁場のことを臨界磁場とよび、\(H_C\)で表される。

転移温度\(T_C\)は厳密には、外部磁場が0のときの、超伝導状態と常伝導状態の境界となる温度を表している。

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ピン止め効果

超伝導物質に、超伝導とならない不純物が混ざっているような物体を考える。この物体を超伝導が起こる環境下に置くと、マイスナー効果により、不純物が存在する場所にのみ外部磁場が侵入する。

外部磁場は超伝導状態の物質中には侵入できないため、不純物中に固定されることになる。こうなると、多少物体の位置がずれても、不純物中に固定された磁場によって元の位置に戻るような力が物体に働く。この力によって、超伝導物質は磁石の上に安定して浮くことができる。このような現象をピン止め効果という。

そのため、実は不純物を全く含まない超伝導物質よりも、ある程度不純物を含む超伝導物質のほうが浮きやすい。

第一種超伝導と第二種超伝導

大きい外部磁場で超伝導が壊れると説明した。実は超伝導には、臨界磁場以上で急に超伝導でなくなる第一種超伝導と、外部磁場が大きくなるにつれてじわじわと超伝導が壊れていく第二種超伝導の2種類が存在する。大半の超伝導物質は第二種超伝導であるといわれている。

第一種超伝導は、臨界磁場以下の外部磁場中を完全に排除することができる。ところが、外部磁場がそれ以上になると突然超伝導性を失ってしまう。

第二種超伝導は、2種類の臨界磁場をもつ。一つ目は超伝導が壊れ始めるときの外部磁場で、もう一つは超伝導が完全に壊れるときの外部磁場である。2つの臨界磁場の間では、外部磁場が大きくなるにつれて、徐々に外部磁場が超伝導物質中に侵入してくることになる。このときにも、超伝導物質に不純物が入っているときと同じようなピン止め効果が発生する。

磁場中冷却とゼロ磁場冷却

磁場中冷却とは、超伝導物質を外部磁場中で冷却することである。一方ゼロ磁場冷却とは、外部磁場を全く印加させないで冷却することである。

超伝導物質は、冷却されたときの磁場を記憶する性質がある。つまり、外部磁場中で冷却したら磁場がピン止めされた状態を記憶するし、ゼロ磁場冷却したら物質内部の磁場が全く存在しない状態を記憶する。

ゼロ磁場冷却の場合は磁場のピン止めができない。そのため、磁場をピン止めできる磁場中冷却のほうが、超伝導体は安定して磁石の上に浮くことができる。

超伝導の反磁性の正体

最初に超伝導が反磁性をもつと書いたが、これはピン止め効果によるものである。

超伝導は、ピン止め効果によって記憶した磁場が変化するのを嫌う。だから、磁石が近づいてきたら、記憶した磁場が変化しないようにするために、超伝導体は磁石から離れていく。

コイルに磁石を近づけると、磁石を遠ざけるような方向の逆起電力が働くことは、小中学校でも学習しただろう。超伝導にもコイルと似たような性質があるということになる。

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まとめ

・超伝導物質が超伝導状態をとるとき、外部磁場はその物質中から排除される。この現象をマイスナー効果と呼ぶ。

・超伝導物質中の不純物や第二種超伝導体に外部磁場が入り込むことで、超伝導体が磁石から出てくる磁場に固定される。この現象をピン止め効果という。超伝導体が安定して浮けるのはこの効果のおかげである。

参考文献

・青木秀夫(2009)『物性科学入門シリーズ 超伝導入門』,裳華房.

・未踏科学技術協会超伝導科学技術研究会(2013)『これ一冊でわかる超伝導実用技術』,日刊工業新聞社.

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