地球温暖化の仕組み―なぜ温室効果ガスは熱を生み出すのか

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温室効果ガスとは、二酸化炭素やメタンなどの温室効果を生み出す気体のことである。これらが地球温暖化をもたらすことはよく知られているが、気体を構成する分子が温室効果をつくりだすメカニズムまでは有名ではないだろう。

この記事では温室効果ガスに焦点を当てて、地球温暖化のメカニズムを解説する。

温室効果の仕組みの概要

原子間の結合がよくバネで例えられるように、原子間の結合距離と結合角度は常に振動している。例えば、二酸化炭素の結合距離(C-O原子間の距離)は1.16Åといわれているが、この値で常に固定されているというわけではない。

もちろん空気中に含まれる温室効果ガスにも、バネのような原子の結合をもっている。そのような結合と、太陽光に含まれている赤外線が共振することで、原子の振動が大きくなっていく。気体分子が赤外線のエネルギーを吸収して蓄えていると言ってもいい。ここで蓄えられたエネルギーは、すぐに熱エネルギーとして放出される。この熱は宇宙空間に放出されずに、地球にとどまることになる。以上が温室効果の概要である。

この仕組み上、原子間距離や角度の振動数と一致した赤外線のみ気体分子に吸収される(ちなみにこの性質を利用して、有機化合物に含まれる官能基を特定するIRという解析が存在する)。

温室効果をもたらす気体ともたらさない気体

温室効果ガスと聞いて最初に思い浮かぶのは二酸化炭素だと思うが、実は二酸化炭素そのものはそこまで強い温室効果をもたらさない。二酸化炭素の量が他の温室効果ガスよりもはるかに多いから、温室効果ガス=二酸化炭素というイメージがあるというだけだ。同量ならば、二酸化炭素よりもメタンの方が強い温室効果を作る。

一方、窒素N2・酸素O2・水素H2・一酸化炭素CO・アルゴンArといった気体は温室効果をもたらさない。

多原子分子の振動の種類

多原子分子の振動は、大まかに伸縮振動と変角振動の2種類に分類できる。伸縮振動は原子の結合方向の振動を指し、もう一方の変角振動は結合がつくる角度の振動を指す。さらに伸縮振動は、左右対称のまま振動する対称伸縮振動と、そうでない逆対称伸縮運動に分けられる。

以上を踏まえると、二酸化炭素の分子振動は上の図のようにまとめられる。このうち、赤外線のエネルギーを吸収できる振動は逆対称伸縮運動と変角運動の2つである。このような振動の性質のことを赤外活性とよぶ。対称伸縮振動に赤外線を吸収する性質はない。

赤外活性と双極子モーメント

赤外活性の特徴として、赤外線のエネルギーを吸収するときに双極子モーメント\(μ\)が変化するというものがある。この双極子モーメント\(μ\)は、電荷\(q\)、結合距離\(l\)を使って次のように定義される。

$$μ \equiv ql$$

二酸化炭素分子の場合、左右対称にO原子が動いても、分子全体の双極子モーメントは変化しない。だから、二酸化炭素の対称伸縮振動は赤外活性をもたず、赤外線を吸収しない。一方、逆対称伸縮振動と変角振動では分子全体の双極子モーメントは変化するため、これらの振動は赤外線を吸収できる。

まとめ

・温室効果は、気体分子の結合の振動と赤外線が共振することでもたらされる。この共振によって得たエネルギーを結合が放出することで、地球が暖かくなる。

・赤外活性とは、赤外線によって双極子モーメントが変化するような性質のことである。赤外活性がある結合は赤外線と共振できるため、温室効果に寄与する。

参考文献

・卜部和夫・川泉文男・平澤政廣・松井恒雄(2013)「理工系学生のための化学基礎 第6版」,野村浩康・川泉文男共編,学術図書出版社.

・冒頭の写真の出典『写真AC』(https://www.photo-ac.com/)

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