行列Aの固有値λと固有ベクトルφは、次の関数を満たす。
Aφ=λφ
この固有値λと固有ベクトルφの求め方を見ていこうと思う。
例題
よく「行列Aの固有値・固有ベクトルを求めよ」という問題を見かけるが、こういわれたら先に求めるのは固有値である。無事固有値が求まった後に、固有ベクトルを求める計算を行う。
では、次の行列を例に、実際に固有値・固有ベクトルを求めてみる。
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固有値の求め方
まず最初に、行列の固有値から求める。その第一歩は、求める固有値をλとおいて、方程式|A−λE|=0を組み立てることである。ここで、Eは単位行列である。単位行列とは、行と列の番号が同じ要素だけ1で、その他の要素は0の正方行列のことである。具体的には、次のような行列である。
行列式|A−λE|は、次のようになる。
この行列式|A−λE|が0になるようなλが、求める行列の固有値となっている。
λ2−8λ+7=0
あとはただの2次方程式である。左辺を因数分解をすれば、λは次の2つになる。
λ=1,7
以上で、固有値が求められた。
固有ベクトルの求め方
固有値が求められたので、後はそれぞれの固有値における固有ベクトルを求めればよい。
固有値λ=1の固有ベクトル
まず、(A−λE)φ=0を考える。この問題では行列Aが2×2行列だから、固有ベクトルの要素数も2である。λ=1を代入して、次の式を得る。
左辺を計算して、次の方程式を得る。
{2x+4y=02x+4y=0
この例では、同じ方程式が2つ得られた。
この段階で通常は、片方の方程式がもう片方の方程式の実数倍になっている(実質同じ関数といえる)。万一そうなっていない場合は、固有値が間違えている可能性があるため、もう一度計算を見直してみよう。
上の式の片方を変形すると、
x=−2y
この式から、固有ベクトルφのx成分とy成分の比は、次のようになる。
x:y=−2:1
以上のことを踏まえれば、λ=1における固有ベクトルφは、定数Cを用いて次のように表せる。
φ=C(−21)
ここで、固有ベクトルφの規格化をする場合がある。規格化とは、固有ベクトルの大きさが1になるように、定数Cを決めることである。
規格化しなかった場合の固有ベクトルφの大きさは、三平方の定理より、
|φ|=√(−2)2+12=√5
したがって、C=1/√5とおけば、固有ベクトルφの大きさは1になる。
ここまで長くなったが、ついに規格化した固有ベクトルが求まった。
φ=1√5(−21)
ちなみに、固有ベクトルφのx,y成分の比を2:−1としても、正しい固有ベクトルが求まる。その場合、固有ベクトルφは次のようになる。
φ=1√5(2−1)
どちらも正解であることを確かめるには、Aφ=λφを満たすことを確認すればよい。
固有値λ=7の固有ベクトル
上と全く同じようにすれば、固有値が変わっても固有ベクトルは求められる。
(A−7・E)φ=0から連立方程式を立てると、次のようになる。
{−4x+4y=02x−2y=0
この式から、固有ベクトルφのx成分、y成分の比は、
x:y=1:1
固有ベクトルφを定数Cで表すと、
φ=C(11)
後は|φ|=√12+12=√2を規格化して、固有ベクトルφが求まる。
φ=1√2(11)
以上で、それぞれの固有値に対応した固有ベクトルが求められた。
参考文献
・矢野健太郎・石原繁(2009)『線形代数』,裳華房.