固有値・固有ベクトルの求め方

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行列Aの固有値λと固有ベクトルφは、次の関数を満たす。

Aφ=λφ

この固有値λと固有ベクトルφの求め方を見ていこうと思う。

例題

よく「行列Aの固有値・固有ベクトルを求めよ」という問題を見かけるが、こういわれたら先に求めるのは固有値である。無事固有値が求まった後に、固有ベクトルを求める計算を行う。

では、次の行列を例に、実際に固有値・固有ベクトルを求めてみる。

(3425)

固有値の求め方

まず最初に、行列の固有値から求める。その第一歩は、求める固有値をλとおいて、方程式|AλE|=0を組み立てることである。ここで、E単位行列である。単位行列とは、行と列の番号が同じ要素だけ1で、その他の要素は0の正方行列のことである。具体的には、次のような行列である。

E=(1000100001)

行列式|AλE|は、次のようになる。

|3425|λ|1001|=|3λ425λ|=(3λ)(5λ)8=λ28λ+7

この行列式|AλE|が0になるようなλが、求める行列の固有値となっている。

λ28λ+7=0

あとはただの2次方程式である。左辺を因数分解をすれば、λは次の2つになる。

λ=1,7

以上で、固有値が求められた。

固有ベクトルの求め方

固有値が求められたので、後はそれぞれの固有値における固有ベクトルを求めればよい。

固有値λ=1の固有ベクトル

まず、(AλE)φ=0を考える。この問題では行列Aが2×2行列だから、固有ベクトルの要素数も2である。λ=1を代入して、次の式を得る。

(314251)(xy)=(00)

左辺を計算して、次の方程式を得る。

{2x+4y=02x+4y=0

この例では、同じ方程式が2つ得られた。

この段階で通常は、片方の方程式がもう片方の方程式の実数倍になっている(実質同じ関数といえる)。万一そうなっていない場合は、固有値が間違えている可能性があるため、もう一度計算を見直してみよう。

上の式の片方を変形すると、

x=2y

この式から、固有ベクトルφのx成分とy成分の比は、次のようになる。

x:y=2:1

以上のことを踏まえれば、λ=1における固有ベクトルφは、定数Cを用いて次のように表せる。

φ=C(21)

ここで、固有ベクトルφ規格化をする場合がある。規格化とは、固有ベクトルの大きさが1になるように、定数Cを決めることである。

規格化しなかった場合の固有ベクトルφの大きさは、三平方の定理より、

|φ|=(2)2+12=5

したがって、C=1/5とおけば、固有ベクトルφの大きさは1になる。

ここまで長くなったが、ついに規格化した固有ベクトルが求まった。

φ=15(21)

ちなみに、固有ベクトルφのx,y成分の比を2:1としても、正しい固有ベクトルが求まる。その場合、固有ベクトルφは次のようになる。

φ=15(21)

どちらも正解であることを確かめるには、Aφ=λφを満たすことを確認すればよい。

固有値λ=7の固有ベクトル

上と全く同じようにすれば、固有値が変わっても固有ベクトルは求められる。

(A7E)φ=0から連立方程式を立てると、次のようになる。

{4x+4y=02x2y=0

この式から、固有ベクトルφのx成分、y成分の比は、

x:y=1:1

固有ベクトルφを定数Cで表すと、

φ=C(11)

後は|φ|=12+12=2を規格化して、固有ベクトルφが求まる。

φ=12(11)

以上で、それぞれの固有値に対応した固有ベクトルが求められた。

参考文献

・矢野健太郎・石原繁(2009)『線形代数』,裳華房.

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