固有値・固有ベクトルの求め方

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行列\({\bf A}\)の固有値λと固有ベクトルφは、次の関数を満たす。

$${\bf A}φ=λφ$$

この固有値λと固有ベクトルφの求め方を見ていこうと思う。

例題

よく「行列\({\bf A}\)の固有値・固有ベクトルを求めよ」という問題を見かけるが、こういわれたら先に求めるのは固有値である。無事固有値が求まった後に、固有ベクトルを求める計算を行う。

では、次の行列を例に、実際に固有値・固有ベクトルを求めてみる。

$$\left(\begin{array}{cc} 3&4\\ 2&5\\  \end{array}\right)$$

固有値の求め方

まず最初に、行列の固有値から求める。その第一歩は、求める固有値を\(λ\)とおいて、方程式\(|{\bf A}-λ{\bf E}|=0\)を組み立てることである。ここで、\({\bf E}\)は単位行列である。単位行列とは、行と列の番号が同じ要素だけ\(1\)で、その他の要素は\(0\)の正方行列のことである。具体的には、次のような行列である。

$${\bf E}=\left(\begin{array}{cccc} 1&0&\cdots&0\\0&1&\cdots&0\\ \vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\0&0&0&1\end{array}\right)$$

行列式\(|{\bf A}-λ{\bf E}|\)は、次のようになる。

\begin{eqnarray}\left|\begin{array}{cc} 3&4\\ 2&5\\  \end{array}\right|-λ\left|\begin{array}{cc} 1&0\\ 0&1\\  \end{array}\right|&=&\left|\begin{array}{cc} 3-λ&4\\ 2&5-λ\\  \end{array}\right|\\&=&(3-λ)(5-λ)-8\\&=&λ^{2}-8λ+7\end{eqnarray}

この行列式\(|{\bf A}-λ{\bf E}|\)が0になるようなλが、求める行列の固有値となっている。

$$λ^{2}-8λ+7=0$$

あとはただの2次方程式である。左辺を因数分解をすれば、\(λ\)は次の2つになる。

$$λ=1,7$$

以上で、固有値が求められた。

固有ベクトルの求め方

固有値が求められたので、後はそれぞれの固有値における固有ベクトルを求めればよい。

固有値\(λ=1\)の固有ベクトル

まず、\(({\bf A}-λ{\bf E})φ={\bf 0}\)を考える。この問題では行列\({\bf A}\)が2×2行列だから、固有ベクトルの要素数も2である。\(λ=1\)を代入して、次の式を得る。

$$\left(\begin{array}{cc} 3-1&4\\ 2&5-1\\  \end{array}\right)\left(\begin{array}{c} x\\ y\\  \end{array}\right)=\left(\begin{array}{c} 0\\ 0\\  \end{array}\right)$$

左辺を計算して、次の方程式を得る。

\begin{cases} 2x+4y=0 \\ 2x+4y=0 \end{cases}

この例では、同じ方程式が2つ得られた。

この段階で通常は、片方の方程式がもう片方の方程式の実数倍になっている(実質同じ関数といえる)。万一そうなっていない場合は、固有値が間違えている可能性があるため、もう一度計算を見直してみよう。

上の式の片方を変形すると、

$$x=-2y$$

この式から、固有ベクトル\(φ\)のx成分とy成分の比は、次のようになる。

$$x:y=-2:1$$

以上のことを踏まえれば、\(λ=1\)における固有ベクトル\(φ\)は、定数\(C\)を用いて次のように表せる。

$$φ=C\left(\begin{array}{c} -2\\ 1\\  \end{array}\right)$$

ここで、固有ベクトル\(φ\)の規格化をする場合がある。規格化とは、固有ベクトルの大きさが1になるように、定数\(C\)を決めることである。

規格化しなかった場合の固有ベクトル\(φ\)の大きさは、三平方の定理より、

$$|φ|=\sqrt{(-2)^2+1^2}=\sqrt{5}$$

したがって、\(C=1/ \sqrt{5}\)とおけば、固有ベクトル\(φ\)の大きさは1になる。

ここまで長くなったが、ついに規格化した固有ベクトルが求まった。

$$φ=\frac{1}{\sqrt{5}}\left(\begin{array}{c} -2\\ 1\\  \end{array}\right)$$

ちなみに、固有ベクトル\(φ\)のx,y成分の比を\(2:-1\)としても、正しい固有ベクトルが求まる。その場合、固有ベクトル\(φ\)は次のようになる。

$$φ=\frac{1}{\sqrt{5}}\left(\begin{array}{c} 2\\ -1\\  \end{array}\right)$$

どちらも正解であることを確かめるには、\({\bf A}φ=λφ\)を満たすことを確認すればよい。

固有値\(λ=7\)の固有ベクトル

上と全く同じようにすれば、固有値が変わっても固有ベクトルは求められる。

\(({\bf A}-7・{\bf E})φ={\bf 0}\)から連立方程式を立てると、次のようになる。

\begin{cases} -4x+4y=0 \\ 2x-2y=0 \end{cases}

この式から、固有ベクトル\(φ\)のx成分、y成分の比は、

$$x:y=1:1$$

固有ベクトル\(φ\)を定数\(C\)で表すと、

$$φ=C\left(\begin{array}{c} 1\\ 1\\  \end{array}\right)$$

後は\(|φ|=\sqrt{1^2+1^2}=\sqrt{2}\)を規格化して、固有ベクトル\(φ\)が求まる。

$$φ=\frac{1}{\sqrt{2}}\left(\begin{array}{c} 1\\ 1\\  \end{array}\right)$$

以上で、それぞれの固有値に対応した固有ベクトルが求められた。

参考文献

・矢野健太郎・石原繁(2009)『線形代数』,裳華房.

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