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正準方程式(ハミルトン方程式)
正準方程式とは、上の2つの方程式のことである。この正準方程式の求め方は複数存在し、ハミルトニアンの全微分を使うものや、最小作用の原理を使うものなどがある。この記事では、ハミルトニアンの全微分を使う方法で、これらの正準方程式を導出する。
ハミルトニアンの全微分
ハミルトニアンの定義式の両辺の全微分を考えて、比較する。
ハミルトニアンが含む変数
ハミルトニアンの全微分を考えるには、まずそれがどのような変数を含むのかを確認しなければならない。ハミルトニアン\(H\)は、次のように定義される量であった。
この定義式の左辺から、ハミルトン\(H\)は、\((q,p,t)\)の3つの変数のみを含む。したがって\(H\)の全微分\(dH\)は、次のようになる。
ラグランジアンが含む変数
ハミルトニアンの定義式の右辺に注目すると、ラグランジアン\(L\)は\((q,\dot{q},t)\)の3変数を含むことがわかる。これに注目すると、\(H\)の全微分は次のように書くこともできる。
右辺の第四項について、ポテンシャルエネルギー\(V\)は速度\(\dot{q}\)に依存しないことから、次のように変形できる。
途中で一般化運動量\(p_i\)の定義式を代入した。
また、一般化運動量の時間微分\(\dot{p}_i\)と運動エネルギー\(T\)、一般化力\(Q_i\)の間には次の関係がある。
参考:ラグランジュ運動方程式の導出
一般化力とポテンシャルエネルギーの関係式を代入すると、
式(3)と式(4)を式(2)に代入する。
二通りの\(dH\)の比較
式(1)と式(5)で、2通りの\(dH\)を示した。この2式は、\(dp_i,dq_i,dt\)という3つの共通な微小量を含んでいる。この微小量の係数は2つの式で等しくなるから、次の3つの関係式が現れる。
この3つの関係式のうち、最初の2つをまとめてハミルトンの正準方程式とよぶ。
最後の1つは、ラグランジアンが直接時刻\(t\)を含む場合でないと0になってしまう。
まとめ
・ハミルトニアンの全微分から、正準方程式を求めた。
参考文献
・Goldstein, Herbert. “Classical Mechanics.” 2nd ed. Reading, Mass: Addison-Wesley Publishing Company, 1980.
(題名を斜体にできないので” “でくくっています)
・戸田盛和(1982)『力学〔物理入門コース1〕』,岩波書店.