極座標のシュレディンガー方程式に関するハミルトニアンの導出

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量子力学のハミルトニアンˆHは次のように表された。

iħtΨ(r,t)=(ħ22m2+V(r))Ψ(r,t)
iħtΨ(r,t)=ˆHΨ(r,t)

参考:シュレディンガー方程式と運動量演算子の求め方

この記事では、極座標のラプラシアンから、極座標のシュレディンガー方程式とハミルトニアンを求める。

なお、水素原子のまわりの電子や球面調和関数の導出などについては別の記事にまとめてあります。

参考:水素原子中の電子の波動関数と球面調和関数の導出

前提知識

極座標のナブラ

=exx+eyy+ezz=err+eθrθ+eφrsinθφ

極座標のラプラシアン

=2=(err+eθrθ+eφrsinθφ)(err+eθrθ+eφrsinθφ)=2r2+2rr+1r2(1sinθθ(sinθθ)+1sin2θ2φ2)=1r2r(r2r)+1r2(1sinθθ(sinθθ)+1sin2θ2φ2)

極座標の単位ベクトル

er=(sinθcosφ,sinθsinφ,cosθ)
eθ=(cosθcosφ,cosθsinφ,sinθ)
eφ=(sinφ,cosφ,0)

角運動量演算子

古典的な角運動量はl=r×pだから、角運動量演算子ˆlは、運動量演算子と極座標のナブラを使って次のように変形できる。A×A=0と外積の符号に注意する。右ねじを意識すれば、外積の向きは間違えないはずだ。

参考:力のモーメントと角運動量の関係

ˆl=ˆr׈p=r×ħi=rer×ħi(err+eθrθ+eφrsinθφ)=ħi(r(er×er)r+(er×eθ)θ+(er×eφ)1sinθφ)=ħi((er×eθ)θ+(er×eφ)1sinθφ)=ħi((+eφ)θ+(eθ)1sinθφ)

次に、この角運動量演算子の二乗ˆl2を考える。極座標の単位ベクトルer,eφ,eθはそれぞれ直交し、かつその大きさは1である。だから、eφeθの内積について、次の関係が成り立つ。

eφeφ=1eθeθ=1

この関係を意識してˆl2を計算する。

ˆl2=(ħi)2(eφθeθ1sinθφ)(eφθeθ1sinθφ)=ħ2(2θ2eφθ(eθ1sinθ)φeθsinθ(φeφ)θ+1sin2θ2φ2)(1)

第二項の計算

上の式のカッコ内の第二項を詳しく計算してみる。

まず、内積eφeθは、

eφeθ=sinφcosθcosφ+cosφcosθsinφ=0

また、eθθで偏微分すると、

eθθ=(sinθcosφ,sinθsinφ,cosθ)

だから、内積eφeθθは、

eφeθθ=sinφsinθcosφcosφsinθsinφ=0

以上を使うと、第二項が計算できる。

eφθ(eθ1sinθ)φ=eφ(1sinθeθθ+eθθ1sinθ)φ=(1sinθeφeθθ+eφeθθ1sinθ)φ=0

第三項の計算

次に、カッコ内の第三項を詳しく計算してみる。

単位ベクトルeφφで偏微分すると、

eφφ=(cosφ,sinφ,0)

だから、内積eθeφφも次のように求められる。

eθeφφ=cosθcos2φcosθsin2φ=cosθ(cos2φ+sin2φ)=cosθ

最終的なˆl2

求めた第二項と第三項を、元の式(1)に代入する。

ˆl2=ħ2(2θ2eφθ(eθ1sinθ)φeθsinθ(φeφ)θ+1sin2θ2φ2)=ħ2(2θ2+0cosθsinθθ+1sin2θ2φ2)=ħ2(2θ2+cosθsinθθ+1sin2θ2φ2)=ħ2(1sinθ(sinθ2θ2+(sinθ)θ)+1sin2θ2φ2)=ħ2(1sinθθ(sinθθ)+1sin2θ2φ2)

ˆl2がこのように変形できるということは、このˆl2を極座標のラプラシアンに組み込めることを意味する。

=1r2r2r+1r2(1sinθθ(sinθθ)+1sin2θ2φ2)=1r2r2rˆlħ2r2

この記事の一番最初にあるシュレディンガー方程式の2に、このラプラシアンを代入する。

iħtΨ=(ħ22m2+V(r))Ψ=(ħ22m(1r2r2rˆLħ2r2)+V(r))Ψ=(12m(ħi)2(1r2r2r)+ˆl2mr2+V(r))Ψ

エルミートな動径方向の運動量演算子ˆprħi1rrrを導入すると、このシュレディンガー方程式は次の形になる。

iħtΨ=(ˆp2r2m+ˆl2mr2+V(r))Ψ

以上で、極座標のシュレディンガー方程式が求められた。

この方程式から、極座標のハミルトニアンˆHは、次のように表現される。

ˆH=ˆp2r2m+ˆl2mr2+V(r)

ハミルトニアンの各項の意味

ˆp2r2mは動径方向の運動エネルギー、ˆl2mr2は回転運動エネルギー、V(r)はポテンシャルエネルギーを表している。

まとめ

3次元の極座標におけるシュレディンガー方程式とハミルトニアンを求めた。

参考文献

・A.メシア(1972)『メシア量子力学 2』(小出昭一郎・田村二郎訳),東京図書株式会社.

・猪木慶治・川合光(1994)『量子力学I』,講談社.

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