従来の運動量\({\bf p}=m{\bf v}\)は、物体の並進運動の勢いや激しさを表していた。これの回転運動バージョンが角運動量である。つまり角運動量\({\bf L}\)とは、回転軸に対する回転運動の勢いや激しさを表すパラメータである。
力のモーメント\({\bf N}\)とは、回転軸に対して物体を回転させようとする力の大きさを表す。トルクと呼ばれることもある。
角運動量ベクトル\({\bf L}\)と力のモーメントのベクトル\({\bf N}\)の関係は次の通りになる。
この記事では、2次元平面と3次元空間でこの\({\bf L}\)と\({\bf N}\)の関係式が成り立つことを示す。
目次
二次元平面での角運動量と力のモーメントの関係
\(xy\)平面上の運動方程式は、次の2つである。
$$m\frac{dv_x}{dt}=F_x$$$$m\frac{dv_y}{dt}=F_y$$
\(x\)軸方向の方程式の両辺には\(y\)、\(y\)軸方向の方程式の両辺には\(x\)をそれぞれにかける。
$$my\frac{dv_x}{dt}=yF_x・・・(1)$$$$mx\frac{dv_y}{dt}=xF_y・・・(2)$$
式(2)の両辺から式(1)を引く。
式(3)の左辺について、\(L≡m\left( xv_y-yv_x \right)\)とおくと、
式(3)の右辺について、次のように\(N\)をおく。
$$N≡xF_y-yF_x$$
以上より、式(3)は次のように書き直せる。
$$\frac{dL}{dt}=N$$
この式が、二次元平面における角運動量と力のモーメントの関係である。
三次元空間での角運動量と力のモーメントの関係
三次元でも全く同じ議論をする。
$$m\frac{dv_x}{dt}=F_x$$
$$m\frac{dv_y}{dt}=F_y$$
$$m\frac{dv_z}{dt}=F_z$$
これらの運動方程式を、二次元のときと同様に組み合わせて、次の式を立てる。
$$m\frac{d}{dt}(yv_z-zv_y)=yF_z-zF_y・・・(4)$$$$m\frac{d}{dt}(zv_x-xv_z)=zF_x-xF_z・・・(5)$$$$m\frac{d}{dt}(xv_y-yv_x)=xF_y-yF_x・・・(6)$$
次のように\(L_i\)と\(N_i\)(i=x,y,z)を定義する。
$$L_x=m(yv_z-zv_y)・・・(7)$$$$L_y=m(zv_x-xv_z)・・・(8)$$$$L_z=m(xv_y-yv_x)・・・(9)$$
$$N_x=yF_z-zF_y・・・(10)$$$$N_y=zF_x-xF_z・・・(11)$$$$N_z=xF_y-yF_x・・・(12)$$
これら6つの式と角運動量ベクトル\({\bf L}\)と力のモーメントのベクトル\({\bf N}\)を使って式(4)(5)(6)をまとめると、次の式を得る。
これで、両ベクトルの関係式が求められた。
角運動量ベクトルと力のモーメントのベクトルの定義について
角運動量ベクトル\({\bf L}\)
運動量\(p=mv\)に注意すると、式(7)(8)(9)は次のように書き換えられる。
$$L_x=yp_z-zp_y・・・(7′)$$$$L_y=zp_x-xp_z・・・(8′)$$$$L_z=xp_y-yp_x・・・(9′)$$
これらの式は、外積\({\bf L}={\bf r}×{\bf p}\)の定義に他ならない。
したがって、角運動量ベクトル\({\bf L}\)は、位置ベクトル\({\bf r}\)と運動量ベクトル\({\bf p}\)の外積で定義される。
力のモーメントのベクトル\({\bf N}\)
式(10)(11)(12)は、外積\({\bf N}={\bf r}×{\bf F}\)の定義に他ならない。
したがって、力のモーメントのベクトル\({\bf N}\)は、位置ベクトル\({\bf r}\)と力のベクトル\({\bf F}\)の外積で定義される。
参考文献
・戸田盛和(1982)『力学〔物理入門コース1〕』,岩波書店.
・矢野健太郎・石原繁(2012)『線形代数(改訂改題)』,裳華房.