Processing math: 100%

ポインティングベクトルの意味と絶対値

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

ポインティングベクトルS(t,r)とは、電磁場の流れを表すものであり、次のように定義される。

S(r,t)=E(r,t)×H(r,t)

ポインティングベクトルの導出

エネルギー保存則

静電場のエネルギー

位置rでのエネルギー密度は12ε0E2(r)で与えられるため、これを体積で積分すれば、その体積中での静電場のエネルギーUeが求められる。

Ue=12ε0VE2(r)d3r

マクスウェル方程式

次の2つのマクスウェル方程式を思い出す。

rotE(r,t)=B(r,t)t
rotH(r,t)D(r,t)t=j(r,t)

参考:Maxwell方程式の微分形と積分形

1つ目の方程式の両辺には磁場H、2つ目の方程式の両辺には電場Eの内積をとる。

H(rotE)=HBt
E(rotH)EDt=Ej

上の式から下の式を引く。

H(rotE)E(rotH)+EDt=HBtEj(1)

ここで、次のベクトルの恒等式を導入する。

(A×B)=B(×A)A(×B)

この恒等式を式(1)に適応すると、

(E×H)=EjHBtEDt

D=ε0EB=μ0Hをこの式の右辺に代入する。

HBtEDt=μ0HHtε0EEt=12(μ0HtH+μ0HHt+ε0EtE+ε0EEt)=12t(μ0HH+ε0EE)=12t(HB+DE)

この変形より、

(E×H)=Ej12t(HB+DE)

この式の両辺を体積積分する。

V(E×H)dV=VEjdVV12t(HB+DE)dV

右辺について

まず右辺の第一項VEjdVについて考える。

単位体積かつ単位時間で発生するジュール熱wは、次のように与えられた。

w(r)=j(r)E(r)

参考:ジュールの法則とその微分形の導出

ジュール熱wがこのように与えらえるから、これを体積積分してマイナスをつけたVEjdVは、単位時間における領域V内から出て行ったジュール熱を表す。

また、右辺の第二項に含まれる12VDEdVは、最初に見た静電場のエネルギーの式そのものである。このことから第二項は、単位時間での領域V内の電磁場のエネルギーの減少量を表すと考えられる。

左辺について

左辺にガウスの発散定理を適応する。

V(E×H)dV=S(E×H)dS=S(E(r)×H(r))n(r)dS

右辺の考察と組み合わせると、左辺は、単位時間で領域Vを囲む面積領域Sを通って出て行った電磁場のエネルギーを表すといえる。

ポインティングベクトルの定義

以上の考察から、次のようなベクトルを定義する。

S(r)=E(r)×H(r)

このベクトルSポインティングベクトルといい、単位時間で、EHに垂直な単位面積を通って外部に流れる電磁場のエネルギーを指す。これの向きは当然電磁場のエネルギーが流れる方向を向き、大きさは流れる電磁場のエネルギーの大きさを表す。

ポインティングベクトルの大きさ

平面電磁波

E=Ecos(krωt)
B=Bcos(krωt)

のポインティングベクトルの大きさを求めよう。

ファラデーの電磁誘導の法則

B(r,t)t=rotE(r,t)

に、上の平面電磁波を代入する。

ωB=k×E

この式をBについて解く。ここで、波数ベクトルと平行な単位ベクトルをˆk、波数ベクトルの大きさをkとする(つまりk=kˆk)。

B=1ωk×E=kωˆk×E=1cˆk×E

ここで、平面波の分散関係ω=ckを使った。

参考:等位相面と平面波とは

このBを、ポインティングベクトルの定義式に代入する。

S=1μE×B=1cμE×(ˆk×E)=1cμ(E2ˆk(ˆkE)E)=εμμ((Ecos(krωt))2ˆk0E)=εμ(Ecos(krωt))2

電場は進行方向に対して垂直に振動する縦波だから、ˆkE=0となることを途中で使った。

このポインティングベクトルの時間平均と絶対値をとる。

|ˉS|=εμ|E|2

以上で、時間平均したポインティングベクトル絶対値が求められた。

まとめ

・ポインティングベクトルは、電磁波のエネルギーの向きと大きさを表す。

・時間平均したポインティングベクトルの絶対値を求めた。

参考文献

・川田善正(2014)『はじめての光学』,講談社.

・砂川重信(1987)『物理テキストシリーズ4 電磁気学』,岩波書店.

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*

CAPTCHA