量子力学では、あらゆる物体は粒子と波の両方の性質を併せ持っていると考える。それならば、粒子の性質と波の性質をリンクするための決まりがあるはずである。ド・ブロイは、光と同じように、陽子や電子などの質量をもつ粒子すらも波と考えることができるのではないかと考えて、次のような関係式を提案した。
λ=hp
hはプランク定数、pは粒子の運動量である。そして、その粒子は波長λの波と同じ性質を持つ。この波長λをド・ブロイ波長と呼ぶ。
例題1 大きい物体の場合
質量50.0kgの人が速度10.0km/hで動いているときのド・ブロイ波長を計算せよ。
まずは、速度10.0km/hの単位をm/sに直す。
後はド・ブロイ波長の式に代入すればよい。プランク定数をh=6.63×10−34[J・s]とする。
このことから、我々が意識するマクロな世界では、ド・ブロイ波長はかなり短い値がでてくる。
例題2 電子の場合
電子のド・ブロイ波長が5.0×10−11[m]と観測されたとする。このときの加速電圧を求める。
電子が持つ素電荷をeとすると、印加された電圧Vから電子が得るエネルギーEは、次の式で表される。
E=|e|V
ここで、電子の質量をme、電子の速さと運動量をそれぞれv、pとすると、次の式が成り立つ。
p=√2me|e|V
この式をド・ブロイ波長の式に代入する。
電子の質量をme=9.11×10−31[kg]、電子の素電荷をe=−1.60×10−19[C]とすると、加速電圧Vは次のようになる。
よって、電子に603Vの加速電圧をかければ、電子のド・ブロイ波長が5.0×10−11[m]となる。
まとめ
・ド・ブロイ波という考え方によって、物体が粒子と波動の性質を併せ持っていることを表現しやすくなった。
・物体がマクロなほどド・ブロイ波長が短く、ミクロなほどド・ブロイ波長が長くなる。
参考文献
・卜部和夫・川泉文男・平澤政廣・松井恒雄(2013)「理工系学生のための化学基礎 第6版」,野村浩康・川泉文男共編,学術図書出版社.