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熱力学では、系を巨視的に観察することで、乱雑さを表すエントロピー\(S\)を定義した。一方統計力学では、系を微視的に観察したときの現象を考える。この記事では、微視的に系を観察することで、統計力学的にエントロピーについて考えていく。
全体の状態の数とエントロピー
系Aと系Bの状態の数を、それぞれ\(W_A,W_B\)とする。すると、両方の系全体の状態の数\(W_t\)は、\(W_A\)と\(W_B\)の積となる。
$$W_t=W_AW_B$$
さらに、エントロピーは示量性変数だから、系Aと系Bのエントロピーをそれぞれ\(S_A,S_B\)とすると、両方の系全体のエントロピー\(S_t\)は、\(S_A\)と\(S_B\)の和となる。
$$S_t=S_A+S_B$$
エントロピーと状態の数の関係
エントロピー\(S\)は、状態の数\(W\)に依存する関数とみなせる。
$$S=f(W)$$
以上を踏まえると、下の2式が正しいことがわかる。
\begin{eqnarray}S_t&=&S_A+S_B\\&=&f(W_A)+f(W_B)\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}S_t&=&f(W_t)\\&=&f(W_AW_B)\end{eqnarray}
この2式より、次の関係が成り立つ。
$$f(W_AW_B)=f(W_A)+f(W_B)・・・(1)$$
この関係を満たす関数\(f(W)\)は、対数関数に他ならない。事実、定数\(k_B\)を導入して、関数\(f(W)\)を
$$f(W)=k_BlnW$$
と定義すると、
\begin{eqnarray}f(W_AW_B)&=&k_Bln(W_AW_B)\\&=&k_B(lnW_A+lnW_B)\\&=&f(W_A)+f(W_B)\end{eqnarray}
より、式(1)が成り立つことが確認できる。
したがって、エントロピー\(S\)も、次のような関数で書ける。
$$S=k_BlnW$$
この関係式をボルツマンの関係式とよぶ。また、定数\(k_B\)はボルツマン定数とよばれ、およそ次の値となる。
$$k_B=1.38×10^{-23}JK^{-1}$$
まとめ
・状態の数とエントロピーの示量性から、エントロピーが\(S=k_BlnW\)を満たすことを確認した。
参考文献
・小田垣孝(2003)『統計力学』,裳華房.
・藤井勝彦(1990)『統計力学』,マグロウヒル出版株式会社.