物理量は、示量性変数と示強性変数(強度変数)の2種類に分類される。これらの違いは、系の大きさを変えたときに、その物理量が系の大きさの変化に比例するかどうかで決まる。系の大きさに比例する方を示量性変数、しない方を示強性変数とよぶ。具体的には、示量性変数は体積Vや物質量n、示強性変数は温度Tや圧力pが挙げられる。
示量性変数について
示量性変数と示強性変数の違いについては、気体の分割を考えればわかりやすい。
体積Vで密閉された箱を用意する。この箱を仕切りなどでちょうど半分に分割したときの物理量の変化をみる。
まず体積Vは明らかに半分になる。物質量nについては、気体を構成する分子がそれぞれの部屋に半分ずつに分けられたと考えれば、nも半分になっていることがわかる。内部エネルギーUも、エネルギー保存則より半分になる。
また、仕切りを取り除いて元の状態に戻すと、それぞれの物理量も元の値に戻る。これは、系が2倍になると、示量性変数も2倍になることを意味する。
以上から、示量性変数は系の大きさの変化に比例する。
ちなみに図には載っていないが、エントロピーSも示量性変数である。
示強性変数について
こちらでも同様に考えてみる。
系を分割しても、温度Tと圧力pは変わらない。事実、広い部屋を大きい仕切りで分けても、室温が変化したり空気が薄くなったり濃くなったりしない。最後に内部エネルギー密度U/Vが残ったが、UとVは両方とも示量性変数だから系を分割したら両方1/2になる。したがって、系の分割後の内部エネルギー密度も(U/2)/(V/2)=U/Vになるため、内部エネルギー密度は系の分割で変化しない。ちなみに、1molあたりの内部エネルギーも同様にして変化しないことが確認できる。
以上から、示強性変数は系の大きさの変化に比例しない。
まとめ
・示量性変数は系の大きさの変化に比例する
・示強性変数は系の大きさの変化に比例しない
参考文献
・三宅哲(1994)『熱力学』,裳華房.