量子力学

希ガスの性質―なぜヘリウムは絶対零度で固体にならないのか

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絶対零度とは、熱力学における絶対温度Kの最低となる温度のことである。この絶対零度は摂氏-273.15℃である。この温度ではエントロピーとエンタルピーは0となる。

この温度になるとあらゆる物質は凍ると書いてあるものも多いが、実はヘリウムは単純に絶対零度になっただけでは固体にならない。

この記事では、そのようなヘリウムについて考えることで、希ガスの性質について考える。また、ヘリウムには安定した同位体が2種類存在するが、ここでいうヘリウムとは実際により多く存在する質量数4のヘリウムを指す。

参考:エントロピーの定義とは

参考:熱力学第〇法則まとめ

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原子の構造―電子軌道と原子核について

原子の構造を大雑把に説明すると、「原子核の周りに電子が存在しているような粒子」となる。そして原子核は陽子と中性子で成り立ち、元素の種類は陽子の数で決まる。

中学や高校で学習するのはだいたいここまでだが、この記事ではその知識をもとにもう少しだけ厳密に原子の構造を考えてみる。

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トンネル効果で人が壁をすり抜けられる確率

トンネル効果というものを聞いたことがあるだろうか。ざっくり説明すると、物体が通常では通り抜けできない壁を通り抜けてしまう現象のことである。

このトンネル効果は、素粒子のような極めて小さい物体ならよく起こるものだが、通常人間が意識するようなレベルの大きさでは全くといってもいいほど起こらない。

この記事では、実際に人間が壁を通り抜けられる確率を具体的に計算して、それがいかに非現実的であるかを解説する。

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ポテンシャル障壁によるトンネル効果の計算

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前の記事で、シュレディンガー方程式を使って波動関数を求めるということは、粒子の位置を示す確率密度を求めることであると結論付けた。

この記事では、一次元矩形型ポテンシャルを例に、実際にシュレディンガー方程式を解く。さらに、反射率と透過率も求める。

参考:シュレディンガー方程式を解く意味とは

参考:確率流密度と連続の式の導出

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大分配関数によるフェルミ粒子とボーズ粒子の分布関数の導出

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ここでいう分布関数とは、とあるエネルギー準位に入る粒子の量を表すもので、エネルギーと粒子数のグラフで表現される。そして、粒子にはボーズ粒子とフェルミ粒子の2種類存在するが、それぞれの分布関数は異なる。

ボーズ粒子の分布関数のことをボーズ分布関数またはボーズ-アインシュタイン分布、またフェルミ粒子の分布関数のことをフェルミ分布関数またはフェルミ-ディラック分布とよぶ。

この記事では、大分配関数を使って、それぞれの分布関数を導出する。

参考:大分配関数とグランドカノニカル分布の導出

参考:フェルミ粒子とボーズ粒子の波動関数の導出

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フェルミ粒子とボーズ粒子の波動関数の導出

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シュレディンガー方程式を使えば、なぜボーズ粒子とフェルミ粒子の2種類の粒子が存在するのかがわかる。

この記事では、2粒子系のシュレディンガー方程式からわかる波動関数の対称性・反対称性から、ボーズ粒子とフェルミ粒子の波動関数を導出する。

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極座標のシュレディンガー方程式に関するハミルトニアンの導出

量子力学のハミルトニアン\(\hat{H}\)は次のように表された。

$$iħ\frac{∂}{∂t}Ψ({\bf r},t)=\left( -\frac{ħ^2}{2m}∇^2 +V({\bf r}) \right) Ψ({\bf r},t)$$
$$iħ\frac{∂}{∂t}Ψ({\bf r},t)=\hat{H}Ψ({\bf r},t)$$

参考:シュレディンガー方程式と運動量演算子の求め方

この記事では、極座標のラプラシアンから、極座標のシュレディンガー方程式とハミルトニアンを求める。

なお、水素原子のまわりの電子や球面調和関数の導出などについては別の記事にまとめてあります。

参考:水素原子中の電子の波動関数と球面調和関数の導出

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確率流密度と連続の式の導出

確率流密度\({\bf j}\)とは、粒子が存在する確率の流れを表すベクトルであり、次のように定義される。

$$ {\bf j}({\bf r},t)=\frac{\hbar}{2mi}(ψ^*({\bf r},t)∇ψ({\bf r},t)-(∇ψ^*({\bf r},t))ψ({\bf r},t))$$

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ブラケットベクトルと消滅演算子・生成演算子の関係まとめ

消滅演算子\(\hat{a}\)は固有値を1つ下げ、生成演算子\(\hat{a}^†\)は固有値を1つ上げる性質をもつ。この記事では、下の7つの式の導出と、それらが意味することの確認を行う。

$$\hat{n}\hat{a}φ_n=(n-1)\hat{a}φ_n・・・(1)$$
$$\hat{n}\hat{a}^†φ_n=(n+1)\hat{a}^†φ_n・・・(2)$$

$$\hat{a}|0>=0・・・(3)$$

$$\hat{n}|n>=n|n>・・・(4)$$

$$\hat{a}^†|n>=\sqrt{n+1}|n+1>・・・(5)$$
$$\hat{a}|n>=\sqrt{n}|n-1>・・・(6)$$

$$<m|n>=δ_{mn}・・・(7)$$

参考:ブラベクトル・ケットベクトルの意味とは

参考:消滅演算子・生成演算子

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消滅演算子・生成演算子の交換関係の導出

調和振動子の消滅演算子\(\hat{a}\)と生成演算子\(\hat{a}^†\)、数演算子\(\hat{n}\)を使った交換関係をまとめてみた。

$$[\hat{a},\hat{a}^†]=1・・・(1)$$$$[\hat{n},\hat{a}]=-\hat{a}・・・(2)$$

$$[\hat{n},\hat{a}^†]=\hat{a}^†・・・(3)$$

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