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熱力学には、熱力学第零法則から第三法則までの基礎的な4つの法則が存在する。この記事では、これらの法則の概要を解説する。
目次
熱力学第零法則
状態Aと状態B、状態Bと状態Cがそれぞれ熱平衡の関係にあるとする。それならば、状態Aと状態Cも熱平衡の関係にある。
この法則は三段論法のように覚えられる。
熱力学第一法則
系の内部エネルギーの変化\(ΔU\)は、系に入ってくる熱量\(Q\)と、系が受ける仕事\(W\)の和となる。
$$ΔU=Q+W$$
仕事の項の符号は、系が仕事をする側なのか系が仕事をされる側なのかで変わるので注意すること。
熱力学第二法則
熱力学第二法則とは、熱が動く方向や、エントロピーにかかわる法則である。この法則は経験則的なものであり、実はこの法則の物理的な証明は最近まで無かった。ところが、2017年にようやく、東大が量子力学を使うことで熱力学第二法則の証明を行った。
この法則には次のような表現方法がある。
トムソンの原理
他に変化を残さずに、一つの熱源から熱を取り込んで、その熱をすべて仕事に変換するサイクルは存在しない。
クラウジウスの原理
他に変化を残さずに、熱を低熱源から高熱源へ移動させるようなサイクルは存在しない。
クラウジウスの不等式
$$\oint \frac{d’Q}{T}≤0$$
エントロピー増大則
断熱過程における不可逆変化で、エントロピーが増大する法則のこと。
$$dS≥0$$
たまに「熱力学第二法則はエントロピー増大則のことだ」というものを見かけるが、エントロピー増大則はだたの熱力学第二法則の表現の一つに過ぎない。
これらの詳細は下の記事を参照のこと。
参考:エントロピー増大則
熱力学第三法則
平衡状態かつ有限な密度の物体において、温度が絶対零度(0K)に近づくと、他の条件にかかわらずエントロピーも0に近づく。
ここでいう他の条件の例としては、物体の圧力や密度などが挙げられる。
温度が低下するにつれてエントロピーは減少するが、この熱力学第三法則は、熱力学におけるエントロピーの下限を決めるものである。
参考文献
・都築嘉弘(2005)『チャート式シリーズ 新物理II』,数研出版.
・三宅哲(1994)『熱力学』,裳華房.
・日本経済新聞(2017)「東大、量子力学から熱力学第二法則を導出することに成功 :日本経済新聞」, https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP456335_W7A900C1000000/ ,最終アクセス日2018/02/22.