力積とは、時間\(Δt\)の間に、力\({\bf F}\)が物体に与える運動量のことである。数式では、次の式の左辺のような形をとる。
この記事では、まず力積のイメージをF-tグラフでつけた後、壁がボールに与える力積を求める。
力積とは
グラフから考える力積のイメージ
上の図は、力\({\bf F}\)と時間\(t\)のグラフを表している。力積は\({\bf F}・Δt\)で定義されるから、力積は\(F-t\)グラフの面積だと言い換えができる。
もし\(F-t\)グラフが長方形でなかったら
式(1)で表される力積の式は、高校生向けの微積分を使わない形となっている。ところが現実の\(F-t\)グラフは、上図のように長方形にはなっていないことが多いため、式(1)の力積の式では対応できない。例えば下のボールが壁にぶつかる問題でも、実際には上のグラフのように、ボールに瞬間的に強い力がかかるのであって、一定の力が時間\(Δt\)だけかかるというわけではない。
そこで、次の図のように、グラフが作る面積を、細さが無限小\(dt\)の長方形で分割して近似してみる。細さが無限小ということは、グラフの横軸は時間\(t\)だから、\(dt \to 0\)の極限をとればよい。
この図から、無限小の細さの長方形の面積の総和が、求める力積となることがわかる。細い長方形の辺の長さはそれぞれ縦\({\bf F}\)横\(dt\)だから、その面積は\({\bf F}・dt\)となる。
運動方程式から力積を求める
運動量を使ってニュートンの運動方程式を書く。
この式の両辺に\(dt\)をかけて、両辺を積分する。
この式の左辺が、力積を積分で表したものとなる。これで、力\({\bf F}\)が時間\(t\)に依存する関数で表現できれば、力のグラフの形にかかわらず、その力積も求められるようになった。
例題 壁がボールに与える力積
質量\(m\)のボールが、図のように速度\(v\)で壁に向かっている。x軸の方向と\(v\)の向きは逆だから、この\(v\)は負になる。そして壁に跳ね返された後、ボールは速度\(v’\)で運動する。このときに壁がボールに与えた力積を求めたい。
壁に衝突する前のボールの運動量は\(mv\)、衝突後の運動量は\(mv’\)である。
衝突の前後の運動量の変化分が、壁がボールに与えた運動量、つまり力積となる。だから求める力積は、衝突後の運動量から衝突前の運動量を引けば求められる。
\(v<0\)より、もし\(|v’|=|v|\)ならば、力積は次のようになる。
まとめ
・力積の意味と定義を確認した。
・衝突前後のボールの速度の変化から、壁がボールに与える力積を求めた。
参考文献
・都築嘉弘(2005)『チャート式シリーズ 新物理II』,数研出版.
・戸田盛和(1982)『力学〔物理入門コース1〕』,岩波書店.