pn接合とは―ダイオードの仕組みについて

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ダイオードとは、電流を一方向にしか通さないような半導体部品のことである。これにはp型半導体とn型半導体をつないだpn接合というものが使われる。

この記事では、この2種類の半導体の違いを解説した後、pn接合についてバンド図を用いて解説する。さらに、pn接合の応用例としてダイオードの原理を紹介する。

キャリアとは

電子工学におけるキャリアとは、電荷を運搬するもののことを指す。具体的には2種類存在する。

一つは自由電子(伝導電子)である。これは負に帯電している粒子のことである。

もう一つはホール(正孔)である。自由電子とは違い、こちらはホールという粒子が存在するわけではない。隙間なく電子が埋められた状態から、一つの電子だけ抜けた状態を考える。電子は負に帯電しているため、電子が抜けた部分は、相対的に正に帯電しているとみなすことができる。この正に帯電した部分をホールとよぶ。

真性半導体と不純物半導体

真性半導体とは、不純物を含まない、あるいはその影響を無視できるような半導体のことである。例えば純粋なSi結晶は真性半導体に分類される。

一方、真性半導体に不純物を加えることで、キャリアの量を調整することができる。このように不純物を含んだ半導体のことを不純物半導体とよぶ。

2種類の不純物半導体

今回は、14族元素であるケイ素(Si)の真性半導体に不純物を添加する場合を考える。ケイ素の最外殻電子は4つだから、ケイ素結晶の共有結合のイメージは上の図のようになる。

p型半導体

p型半導体とは、キャリアとしてホールを用いるような半導体のことである。

p型半導体は主に、ケイ素結晶に13族元素を不純物として添加することで作られる。13族元素は最外殻電子が3つしかないため、この元素がケイ素結晶に入り込むと、上の図のように電子の穴(ホール)が生じる。

ホールが生じると、周囲の電子はそのホールを埋めようとして移動する。その結果、元のホールが埋まり、代わりに新しいホールが生まれる。このようなホールの移動は絶えず行われている。

p型半導体では、このホールが移動することで電荷の移動が行われる。このようにホールが主要なキャリアとして機能する場合、ホールのことを多数キャリアと呼ぶ。一方この場合の電子はホールほど電荷の移動に寄与しないため、少数キャリアと呼ばれる。

n型半導体

n型半導体とは、キャリアとして自由電子を用いるような半導体のことである。

n型半導体は主に、ケイ素結晶に15族元素を不純物として添加することで作られる。15族元素は最外殻電子が5つもあるため、この元素がケイ素結晶に入り込むと、上の図のように共有結合せずに余る電子が生じる。この自由電子が移動することで電荷の移動が行われる。

したがって、今回の多数キャリアは自由電子、少数キャリアはホールとなる。

pn接合の整流作用

これまででp型半導体は正に、n型半導体は負に帯電していることを説明した。このことから、なぜpn接合が一方向の電流しか通さないのかを説明する。

順方向に接続した場合

p型半導体を正、n型半導体を負の電源につなぐ向きのことを順方向という。p型半導体中のホールは負の電極、n型半導体中の自由電子は正の電極に向かいたがる。そのため順方向に接続すると、ホールと自由電子は反対側の電極に向かうようになる。この結果、p型半導体には自由電子、n型半導体にはホールという、それぞれの半導体にとっての少数キャリアが入り込む。このことを少数キャリアの注入という。

このような半導体間での電荷のやり取りによって、順方向に接続されたpn接合は電流を通す。

ちなみに、接合部分付近ではホールと電子の数がつり合う空間が出来上がる。この空間のことを空乏層とよぶ。空乏層では電気的に中性となっている。

逆方向に接続した場合

p型半導体を負、n型半導体を正の電源につなぐ向きのことを順方向という。この場合、ホールは負の電極に、電子は正の電極に引き寄せられるため、それぞれの半導体間で電荷のやり取りが行われない。

したがって、逆方向に接続されたpn接合は電気を通さない。

バンドを用いたpn接合の解説

発光ダイオードについて理解するには、pn接合をバンドの観点で考察する必要がある。まずは今まで解説してきた整流作用をバンドを使って解説して、その後なぜ発光ダイオードは光を放出するのか考える。

これ以降、バンドという考え方を導入して説明する。

参考:バンドについて―価電子帯・禁制帯・伝導帯とはなにか

不純物半導体のフェルミ準位

p型半導体のバンドのフェルミ準位は、価電子帯に近い。

n型半導体のバンドのフェルミ準位は、伝導帯に近い。

真性半導体のフェルミ準位は価電子帯と伝導体の真ん中となる。ところが不純物半導体のフェルミ準位は、上の図のように価電子帯側か伝導帯側のどちらかにずれる。

pn接合のバンド

p型半導体とn型半導体を接合させると、その接合部分でフェルミ準位が連続するようなバンドが形成される。上に行くにつれて電子のエネルギーが大きくなるため、ホールの場合は下に行くほどエネルギーが大きくなっていくことに注意する。

n型半導体中の電子は、接合部分のバンドのスロープがポテンシャル障壁の役割を果たしているため、p型半導体の方へ移動できない。同じように、p型半導体中のホールもn型半導体の方へ移動できない。

ここで、pn接合にバイアス電圧を印加したらどうなるだろうか。

順バイアス電圧

順バイアス電圧を印加すると、接合部分の電子とホールのポテンシャルが低くなる。これによって電子とホールが反対側の半導体に移動できるようになり、少数キャリアの注入が起こる。

逆バイアス電圧

逆バイアス電圧を印加すると、接合部分の電子とホールのポテンシャルが、電圧印加前よりも高くなる。印加前でさえ少数キャリアの注入が行われないのだから、当然ポテンシャルがさらに高くなる印加後でも電子とホールの移動は行われない。

以上が、バンドを用いたpn接合の整流作用の説明である。

なぜpn接合は発光するのか

pn接合に順バイアス電圧を印加して、少数キャリアの注入を起こす。このとき、接合部分で電子のエネルギーが落ちて、禁制帯を通り抜けてホールとくっつくことがある。この電子とホールの結合のことを再結合とよぶ。

電子のエネルギーが落ちるということは、その落ちたエネルギーの分をどこかに放出させなければならない。そこで、電子は光としてエネルギーを放出する。そしてその光の振動数\(ν\)とエネルギーの落ち幅\(E\)の間には、

$$E=hν$$

という関係が成り立つ。

参考:なぜE=hνが成立するのか

ダブルヘテロ接合

pn接合の発光が電子とホールの再結合によって行われるならば、この再結合を促進させることができればより効率よく発光させることができる。

その手段として、接合部分にポテンシャル井戸とよばれる、バンドの凹みをつくる。この井戸を作ると、順バイアス電圧を印加した後電子とホールが井戸の中に落ちる。井戸の底では価電子帯と伝導帯の間の禁制帯が狭いため、井戸の底で再結合がより頻繁に起こる。これによって、効率よく発光できる。

ポテンシャル井戸が2つあるような構造のことをダブルヘテロ接合とよぶ。

まとめ

・p型半導体はホールが、n型半導体は自由電子が多数キャリアである。

・p型半導体とn型半導体をくっつけたものをpn接合とよぶ。

・発光ダイオードは、pn接合部分で電子とホールが再結合することで発光する。

・ダブルヘテロ接合とは、発光ダイオードの発光効率をよくするための工夫の一つである。

参考文献

・霜田光一・桜井捷海(1983)『エレクトロニクスの基礎』,裳華房.

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