熱力学における圧縮率・体積弾性率・体膨張率とは

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

圧縮率κ

dVV=κdp

等温圧縮率κT

κT=1V(Vp)T

体積弾性率kT

kT=V(pV)T

体膨張率α

α=1V(VT)p

圧縮率κとは

体積Vの全微分

液体や気体のように等方的な物体において、体積Vは、圧力pと温度Tの関数として表される。

V=V(p,T)

したがってVの全微分dVは、

dV=(Vp)Tdp+(VT)pdT

(Vp)TTを固定した状態でのp微分(VT)ppを固定した状態でのT微分を表す。

圧縮率κの定義

温度Tが一定のとき、物体の周囲の圧力dpが上がるにつれて、体積の変化の割合dV/Vは一次関数的に減少していく。逆に、周囲の圧力が下がっていくと、体積の変化の割合は一次関数的に増加する。この比例定数κを圧縮率と呼ぶ。

dVV=κdp(1)

式(1)より、圧力が増加する(dp>0)と、体積の変化の割合は負((dV/V)<0)になる。これは、物体が収縮していることを表す。

式(1)のマイナスについて

まず、圧縮率κは正で定義したい。ところが、もし式(1)の右辺にマイナスがついていなかったら、圧力が増えるたびに体積も増えることになる。もちろんこんなことは現実的にあり得ない。だから、式(1)の右辺にマイナスをつけて、現実の物理現象に従う式を完成させた。

等温圧縮率κTと体積弾性率kT

一方、体積の全微分の式で温度一定dT=0とすると、次の式が現れる。

dV=(Vp)Tdp(2)

式(1)(2)を比較することで、

κT=1V(Vp)T

このκT等温圧縮率と呼ぶ。

また、この圧縮率の逆数を体積弾性率という。

kT=V(pV)T

体膨張率α

今度は圧力を一定にして、温度を上げていった場合を考える。まずは体積の全微分の式にdT=0を代入する。

dV=(VT)pdT

圧力pが一定のとき、温度dTが上がるにつれて、体積の変化の割合dV/Vは一次関数的に増加していく。逆に、周囲の温度が下がっていくと、体積の変化の割合は一次関数的に減少する。この比例定数を体膨張率と呼ぶ。

α=1V(VT)p

今度は右辺にマイナスをつけなくても、現実の物理現象に沿った式になっている。

体積を一定とした場合

ここでは、体積を一定として、圧力と温度を変化させたときの現象を考える。

体積の全微分の式にdV=0を代入して整理する。

(Vp)Tdp=(VT)pdT

両辺を(Vp)TdTで割る。

(dpdT)V=(VT)p(Vp)T

今は体積一定の過程を考えているため、左辺に添え字Vがつくことに気を付ける。

また、右辺の(VT)pは体膨張率α(Vp)Tは等温圧縮率κTを表しているため、これらを代入すると、

(dpdT)V=ακT=αkT

まとめ

・圧縮率の意味と、等温圧縮率と体積弾性率の関係、体膨張率について触れた。

・体積が一定の過程における圧力のふるまいを、数式で考えた。

参考文献

・三宅哲(1994)『熱力学』,裳華房.

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*

CAPTCHA