ハミルトニアンとは―定義と物理的意味について

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[mathjax]

ハミルトニアン\(H\)とは、次のように定義される量のことである。

$$\displaystyle H(q,p,t)≡\sum_{i=1}^n p_i\dot{q}_i-L(q,\dot{q},t)$$

結論から言うと、ハミルトニアンは系の全エネルギーを表している。この記事では、なぜそう言えるのか確かめる。

ハミルトニアンが全エネルギーであることの証明

全エネルギーとは、運動エネルギー\(T\)とポテンシャルエネルギー\(V\)の和のことである。つまり、\(H=T+V\)を証明できれば、ハミルトニアンが全エネルギーであることが証明できたことになる。

ハミルトニアン中のラグランジアンと証明すべき式

ラグランジアン\(L\)は、次のように定義された。

$$L≡T-V$$

参考:ラグランジュ運動方程式の導出

これをハミルトニアンの定義式に代入する。

$$\displaystyle H(q,p,t)≡\sum_{i=1}^n p_i\dot{q}_i-T+V$$

この式と、求めるべき式\((H=T+V)\)を比較すると、次の関係を証明すればよいことがわかる。

$$\sum_{i=1}^n p_i\dot{q}_i=2T・・・(1)$$

\(\displaystyle \sum_{i=1}^n p_i\dot{q}_i=2T\)の証明

式(1)の左辺について

式(1)に含まれている一般化運動量\(p_i\)は、次のように定義される。

$$p_i≡\frac{∂T}{∂\dot{q}_i}$$

この定義式を式(1)の左辺に代入する。

$$\sum_{i=1}^n p_i\dot{q}_i=\sum_{i=1}^n \frac{∂T}{∂\dot{q}_i}\dot{q}_i$$

直交座標系\({x_j}\)と一般化座標系\({q_j}\)の関係に時間\(t\)が直接含まれない場合、運動エネルギーは\(\displaystyle T≡\sum_{i=1}^n\frac{1}{2}m_i\dot{q}_i^2\)で定義された。これを上の式に代入する。

$$\sum_{i=1}^n \frac{∂T}{∂\dot{q}_i}\dot{q}_i=\sum_{i=1}^n m_i\dot{q}_i^2$$

以上をまとめると、

$$(式(1)の左辺)=\sum_{i=1}^n m_i\dot{q}_i^2$$

式(1)の右辺について

式(1)の右辺は\(2T\)だから、この\(T\)に、先ほど出てきた運動エネルギーの定義式を代入すればよい。

\begin{eqnarray}\displaystyle (式(1)の右辺)&=&2×\sum_{i=1}^n\frac{1}{2}m_i\dot{q}_i^2\\&=&\sum_{i=1}^n m_i\dot{q}_i^2\end{eqnarray}

これで、(式(1)の左辺)=(式(1)の右辺)が証明できたため、式(1)は成立する。したがって、求めたい式\(H=T+V\)も、直ちに成立する。

ハミルトニアンの具体例

一次元調和振動子

一次元調和振動子の運動は、直交座標系\({x_j}\)を使って考えると手っ取り早い。

直交座標系における運動エネルギーは\(T≡\sum_{i=1}^n\frac{1}{2}m_i\dot{x}_i^2\)より、運動量は\(p=m\dot{x}\)である。また、今回は1つの調和振動子の運動を考えるため、\(n=1\)となる。さらに、調和振動子のポテンシャルエネルギーは、\(V(x)=\frac{1}{2}mω^2x^2\)となっていた。

以上を踏まえて、質量\(m_1\)の一次元調和振動子のハミルトニアンを、直交座標系\({x_j}\)を使って求める。

\begin{eqnarray} \displaystyle H&≡&\sum_{i=1}^n p_i\dot{q}_i-(T-V)\\&=&\sum_{i=1}^1 p_i\dot{x}_i-\left(\sum_{i=1}^1\frac{1}{2}m_i\dot{x}_i^2-V\right)\\&=&m_1\dot{x}_1^2-\left(\frac{1}{2}m_1\dot{x}_1^2-\frac{1}{2}m_1ω_1^2x_1^2\right)\\&=&\frac{1}{2}m_1\dot{x}_1^2+\frac{1}{2}m_1ω_1^2x_1^2 \end{eqnarray}

参考:調和振動子のポテンシャルエネルギーとハミルトニアン

まとめ

・ハミルトニアンが全エネルギーを表すことを証明をした。

・ハミルトニアンの具体例を示した。

おまけ

ちなみに量子力学でもハミルトニアンが出てくるが、そちらでは微分を含む演算子という形をとっている。それでも、シュレディンガー方程式より、ハミルトン演算子も全エネルギーを表していることがわかる。ハミルトン演算子と、エネルギーという数値を等式に並べることについて理解するには、固有値問題の知識が必要になる。詳しくは下の記事を参照してください。

参考:シュレディンガー方程式を解く意味とは

参考文献

・小出昭一郎(1983)『解析力学』,岩波書店.

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