量子力学における期待値の求め方

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量子力学における粒子の位置や運動量といった物理量は、確率分布を使って表現される。例えば、状態\(ψ\)の確率密度は\(ρ=ψ^*ψ=|ψ|^2\)である。

状態\(ψ\)における任意の物理量\(f({\bf r})\)の期待値\(<f>\)は、

\begin{eqnarray} <f(\bf r)>&=&\int f({\bf r})ρ(t,{\bf r}) d^3r\\&=&\int ψ^*(t,{\bf r})f({\bf r})ψ(t,{\bf r}) d^3r \end{eqnarray}

そのため、物理量\(O\)の期待値をブラケットベクトル\(<ψ|, \ |ψ>\)を使って書くと次のようになる。

$$\bar{O}=<ψ|\hat{O}|ψ>$$

参考:ブラベクトル・ケットベクトルの意味とは



運動量の期待値

事前準備

シュレディンガー方程式より、次の方程式が求まる。

$$\frac{∂ψ(t,{\bf r})}{∂t}=\frac{1}{iħ}\left( -\frac{ħ^2}{2m}∇^2ψ(t,{\bf r})+V({\bf r})ψ(t,{\bf r}) \right)$$
$$\frac{∂ψ^*(t,{\bf r})}{∂t}=-\frac{1}{iħ}\left( -\frac{ħ^2}{2m}∇^2ψ^*(t,{\bf r})+V({\bf r})ψ^*(t,{\bf r}) \right)$$

参考:シュレディンガー方程式と運動量演算子の求め方

一次元の運動量の期待値

運動量の期待値\(<p>=m\dot{<{\bf r}>}\)を求めるには、素直に位置の期待値\(<{\bf r}>\)を時間\(t\)で微分したものに、粒子の質量\(m\)をかければよい。(変数の上の点は時間微分を表します。念のため)

\begin{eqnarray} <p_j>&=&m\frac{d}{dt}<{\bf r}_j>\\&=&m\frac{d}{dt}\int d^3r ψ^*(t,{\bf r})x_jψ(t,{\bf r})\\&=&m\int d^3r\frac{∂}{∂t}(ψ^*(t,{\bf r})x_jψ(t,{\bf r}))\\&=&m\int d^3r \left( \frac{∂ψ^*}{∂t}x_jψ+ψ^*x_j\frac{∂ψ}{∂t} \right) \\&=&m\int d^3r \left( -\frac{1}{iħ}\left( -\frac{ħ^2}{2m}∇^2+V \right)ψ^*x_jψ+ψ^*x_j \frac{1}{iħ}\left( -\frac{ħ^2}{2m}∇^2+V \right)ψ \right)\\&=&m\int d^3r \frac{ħ}{2im}\left( (∇^2ψ^*)x_jψ-ψ^*x_j(∇^2ψ)\right)\\&=&\int d^3r \frac{iħ}{2}\left( ψ^*x_j(∇^2ψ)-(∇^2ψ^*)x_jψ \right)・・・(1) \end{eqnarray}

途中で事前準備の式が代入されていることに注意する。

次に、右辺第二項を部分積分する。粒子を表す波束は無限遠で0になるから、下の変形に含まれる面積積分\(\int_S\)も0になる。また、途中でガウスの定理が使われている。

参考:不確定性原理の概要と導出

\begin{eqnarray} \int (∇^2ψ^*)x_jψ d^3r&=&\int (∇(∇ψ^*x_jψ)-∇ψ^*・∇(x_jψ)) d^3r\\&=&\int_S (∇ψ^*)x_jψ dS-\int ∇ψ^*・∇(x_jψ)d^3r\\&=&-\int ∇ψ^*・∇(x_jψ)d^3r\\&=&-\left( \int ∇(ψ^*・∇(x_jψ))-ψ^*・∇^2(x_jψ)d^3r \right) \\&=& -\left( \int_S ψ^*・∇(x_jψ)dS-\int ψ^*・∇^2(x_jψ)d^3r \right)\\&=&\int ψ^*∇^2(x_jψ)d^3r・・・(2)\end{eqnarray}

式(1)に式(2)を代入する。途中で\(∇^2(xψ)=x(∇ψ^2)+2\frac{∂ψ}{∂x}\)を代入する。

\begin{eqnarray} <p_j>&=&\int \frac{iħ}{2}\left( ψ^*x_j(∇^2ψ)-(∇^2ψ^*)x_jψ \right)d^3r\\&=&\int \frac{iħ}{2}\left( ψ^*x_j(∇^2ψ)-ψ^*∇^2(x_jψ) \right)d^3r\\&=&\int \frac{iħ}{2}ψ^*\left( x_j(∇^2ψ)-∇^2(x_jψ) \right)d^3r\\&=&\int \frac{iħ}{2}ψ^*\left( -2\frac{∂ψ}{∂x} \right)d^3r\\&=&\int ψ^*\left( \frac{ħ}{i}\frac{∂}{∂x}\right)ψ d^3r\end{eqnarray}

以上で、一次元の運動量の期待値が求められた。

三次元の運動量の期待値

一次元のものを拡張させればよい。

$$<{\bf p}_j>=\int ψ^*\left( \frac{ħ}{i}∇\right)ψ d^3r$$

右辺の\(\left( \frac{ħ}{i}∇\right)\)は、運動量演算子\(\hat{p}\)そのものである。

参考:シュレディンガー方程式と運動量演算子の求め方

この式をブラケットベクトルを使うと、次のように書ける。

$$<{\bf p}_j>=<ψ|\hat{p}_j|ψ>$$

参考:ブラベクトル・ケットベクトルの意味とは

参考文献

・猪木慶治・川合光(1994)『量子力学1 (KS物理専門書)』,講談社.

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