金属・絶縁体・半導体の違いとフェルミ準位について

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電気伝導度の観点から物質を分類すると、金属・絶縁体・半導体に分けられる。これらの分類は、フェルミ準位の位置を意識することで簡単に分類できる。

この記事では、フェルミ準位の解説をしたあと、これらの分類についてバンドを用いて解説する。



フェルミ準位とは

バンドが電子のエネルギー準位の集合体であることは、下の記事で解説した。

参考:バンドについて―価電子帯・禁制帯・伝導帯とはなにか

電子は基本的に低いエネルギー準位をとりたがるため、低い位置にあるエネルギー準位ほど、電子が入っている確率が高くなる。電子はフェルミ粒子であるから、特定のエネルギー準位に電子が存在する確率は、次のフェルミ分布関数に従う。

この図からも、電子のようなフェルミ粒子が存在する確率は、エネルギーが低い位置のほうが大きくなっていることがわかる。さらに、この分布の最大値は1,最低値は0であるため、電子の存在する確率が途中で1/2となるエネルギーが必ず存在する(上の図では\(μ\)となり、統計力学では化学ポテンシャルと呼ばれていた)。このように、確率分布が1/2になるようなエネルギー準位のことを、フェルミ準位とよぶ。

また、この記事では常温におけるフェルミ分布関数について考える。そのため、下の図にでてくるフェルミ分布関数はすべて曲線でなめらかなものとなっている。ちなみに、絶対零度付近のフェルミ分布関数はステップ関数に近い形となる。

参考:大分配関数によるフェルミ粒子とボーズ粒子の分布関数の導出

金属・絶縁体・半導体の違い

金属とは

金属とは、フェルミ準位がバンド中に存在するような物質のことである。言い換えると、電子が存在する確率が1/2になるようなエネルギー準位が、バンド内に位置しているということになる。

上の図に注目すると、フェルミ準位の上側(電子にとってエネルギーが大きい側)が伝導帯、フェルミ準位の下側が価電子帯となっていることがわかる。そもそも価電子帯とは電子で満たされているバンドのことで、伝導帯とは電子が存在しないバンドのことを指す。常温だから伝導帯にも電子が存在するのであり、絶対零度付近でフェルミ分布関数がステップ関数状になっていると、伝導帯には電子はほとんど存在しなくなる。そのため、フェルミ準位が両領域の境界と考えるのも自然だろう。

金属では価電子帯と伝導帯がつながっているので、常温下では、上の図のように価電子帯には大量のホールが、伝導帯には大量の電子が存在するようになる。つまり、金属には大量のキャリアが含まれているのだ。そのため、金属は電流をよく通すのである。

絶縁体とは

絶縁体とは、フェルミ準位が禁制帯中に存在して、かつ価電子帯と伝導帯の両方から十分離れているような物質のことである。

この場合、価電子帯の電子は多すぎるため、電流を通せるだけのホールは生まれない。同時に伝導帯の電子も少なすぎることになるため、こちらも駄目だ。このように、絶縁体ではそもそも電荷を運ぶキャリアがほとんど存在しないため、絶縁体は電流を通さないのである。

半導体とは

半導体とは、フェルミ準位は禁制帯中に存在しているが、バンドギャップが絶縁体ほど大きくないような物質のことである。半導体は、金属と比べると電流を通さないが、絶縁体ほど電流を遮断できない。中途半端な物質である。

半導体には真性半導体と不純物半導体の2種類が存在する。真性半導体とは、不純物を含まないような半導体のことを指す。上の図は、真性半導体の中でも有名なシリコンの単結晶のバンドを表している。

不純物半導体について

不純物半導体とは、その名の通り真性半導体に不純物を含むような半導体のことである。真性半導体に不純物を混ぜると、フェルミ準位が上下に移動する。不純物の名前について、結晶中のホールを増やすものをアクセプタ、電子を増やすものをドナーとよぶ。つまり、真性半導体にアクセプタを混ぜるとp型半導体、ドナーを混ぜるとn型半導体ができる。以降、それぞれの半導体について解説する。

フェルミ準位が価電子帯に近い場合、金属ほどではないが価電子帯の電子が少なくなるため、ある程度のホールが生じる。そのため、この半導体はホールを多数キャリアとして電流を通す。このような半導体のことをp型半導体という。当然この場合、伝導帯には電子はほとんど存在しない。

一方フェルミ準位が伝導帯に近い場合、こちらも金属ほどではないが、伝導帯に電子がいくつか存在することになる。そのため、この半導体は電子を多数キャリアとして電流を通す。このような半導体のことをn型半導体という。当然この場合、価電子帯は電子で満たされていることになる。

p型半導体とn型半導体をくっつけると、pn接合という、ダイオードでよく使われる構造ができあがる。これについては次の記事を参照してください。p型半導体とn型半導体の結晶構造についても書いてあります。

参考:pn接合とは―ダイオードの仕組み

まとめ

・金属は、フェルミ準位がバンド中に存在するため、キャリアが豊富に存在する。したがって、金属の電気伝導度は高い。

・絶縁体は、フェルミ準位が禁制帯中に存在するため、キャリアがほとんど存在しない。そのため、絶縁体は電流をほとんど通さない。

・半導体は、フェルミ準位が禁制帯中に存在するものの、絶縁体よりも禁制帯の幅が狭い。そのため、電気伝導度は金属未満かつ絶縁体よりも大きい。

参考文献

・Charles Kittel(1998)『キッテル固体物理学入門下』,宇野良清・津屋昇・森田章・山下次郎訳, 丸善株式会社.

・吉野純一(1997)『電子工学の基礎』,コロナ社.

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